再び幕が開くその日まで
再び幕が開くその日まで
演劇オタク、Sexy Zoneの「RUN」に泣く。
2020年8月18日
「とにかくなにも言わず聴いてくれ!」と叩きつけたくなる1曲がある。
2020年、大いなる期待と高揚で始まったはずが、誰もが行き場のない閉塞感に胸ふさがれることとなった。失われし2020年に惑うすべての人にぜひとも聴いてほしい1曲、それがSexy Zoneの「RUN」である。
そもそもこの曲は、このような事態を想定してのことではなく、中島健人主演のドラマ主題歌、及びSexy Zoneの新レーベル移籍後第1段シングルとして発売されたものであり、その歌詞の内容はドラマ及び今現在のSexy Zoneの所信表明というか、彼らのリアルになぞらえたエモーショナルでキャッチーな、まあいわば一見ファン向けといっても良いようなものではあった。
しかし、わたしは何気なくテレビ番組で見て「いい曲じゃん」と思っていたこの曲に、完全にやられてしまった。それはなぜか。
2020年、エンタメは突如として時を止めてしまったのだ。
わたしは演劇が好きで、ミュージカルが好きで、音楽を愛してる。それらを愛し、それらを浴びるように摂取することはわたしにとって生き甲斐であり、生きる糧だった。
しかし、それらは突然やってきた嵐のようなものに、すべてが奪われてしまった。
エンタメがなければ生きてゆけないわけではないけれど、わたしの生命を輝かせるのはエンタメなのだ。そのために働いてる。息をしている。
しかし、このような事態になると誰が予想できた?
誰も予想などできなかった。誰も悪くない……でも……
もやもやした気持ちのまま、中止と知らせのあったチケットをじっと見つめる。
わくわくした気持ちで、友達と協力しあってとったチケット。「仕方ないよね……」「また、落ち着いたら……」何度このやり取りをしただろう。
そんな中、事態はゆるやかに改善し出し、エンタメは少しずつ息を吹き返しはじめた。
わたしの待ち望んだ舞台やコンサートのいくつかも、再開されるという。わたしはこのニュースを心臓が凍りそうな想いで聞いた。
それというのも、ライブハウス、そして舞台においてのクラスターが連日ニュースで報道され、様々なワイドショーの様々な人々が異口同音にその対応、対策のマズさを批判する。「まあたしかにね」と思う部分もある。しかし折しもわたしの生命といってもよい大好きな舞台そしてコンサートが再開されるという。心穏やかでいられるはずもない。
正直複雑すぎた。もし、大好きな舞台やコンサートでそんな事態になり、かれらが批判の矛先に立たされることになったら………それこそ心臓が止まりそうな想いだった。
そんな中聴いた、Sexy Zoneの歌う「RUN」は、わたしの胸にぶっ刺さってきたのだ。
「確かなものなんてないけど」かれらはファンを信じ、必死になり、ありとあらゆる対策を講じてエンタメを「come back」しようとしてくれていたのだ。
「止まらないで」「途切れないで」と、せつないメロディにのせて胸に響いてくる若く透明感のあるユニゾン。以前からユニゾンの美しさには注目していたが、こんなにきれいだとは思わなかった。
オケとロックの絶妙な調和に警鐘を鳴らすかのような印象的なシンセサイザーのフレーズが何度も何度も差し込まれる。4人の個性的なボーカルはメロディと歌詞を考えるとベストな歌割りとしか言いようがなく、特に2番のアレンジのきいたAメロにのっかる菊池風磨のパンチの効いた甘い歌声は顎がはずれそうになるくらいの衝撃であった。これ考えたやつは天才か変態のどちらかだと心底思う。
なにより、まるで自分たち自身を鼓舞するように「止まらないで」「途切れないで」「終わらないだろう?」と繰り返し繰り返し訴えかけてくるせつなく哀愁あふれるメロディ。
そう、Sexy Zone。
ジャニーズの若手グループであるかれら自身も、折しも延期となったコンサートの振替講演を、事務所の先陣をきって発表したのである。
中島健人が言う。「止まらないで、という気持ち。エンタメを止めてはならないという気持ちで……」と。
ひょんなことから演劇畑からSexy Zoneというアイドル畑に片脚を踏み入れていたわたしは、泣きながらその言葉を聞いた。そして「止まらないで」「途切れないで」と歌うかれらのパフォーマンスを泣きながら見た。
エンタメを止めてはいけない。絶対に。
芸術は、音楽は、人が人たる証明なのだから。
でも、頑張るのは、かれらじゃないんだよ。
エンタメを愛するわたしたちが、頑張らないといけないんだ。
もちろん事務所や制作サイドのしっかりとした対策も必要だけれど。
かれらの「止まらないで」「途切れないで」という想いを支えて守ってあげないといけないのは、エンタメを愛するわたしたちなんだ。
ひとりひとりがその想いをしっかり持って、芸術を、音楽を、エンタメを終わらせないよう、途切れさせないよう、愛さなくてはいけない。努力しなくてはいけない。でないとこのままではエンタメは静かに心臓を止めてしまう。失われてしまう。
演者を批判しないで。罵倒しないで。そうじゃない。そうじゃないじゃない………
未曾有のこの事態。これから先、舞台やコンサートがどうなってゆくのか、正直わからない。
でも、芝居を、ミュージカルを、音楽をもし愛する気持ちがあるなら、Sexy Zoneが祈るような気持ちを込めて「止まらないで」「途切れないで」と歌っている「RUN」を聴いてほしい。
エンタメを愛する気持ちがあるなら、エンタメを止めないよう頑張らなくてはいけないのはかれらではなく、わたしたちだ。だから考える。
愛をもって知を。知をもって愛を。
愛と知で、エンターテイメントを守りたい。
あのわくわくした気持ち。幕が開く瞬間。会場が興奮と熱気に支配され、身体じゅうの血が沸騰するような、あの生命のかけらが一気にはじけてきらきらとちりばめられるような瞬間が戻ってくるその日まで。
わたしは「RUN」を聴き続ける。泣きながら。愛しながら。考えながら………ずっと。
2020年、大いなる期待と高揚で始まったはずが、誰もが行き場のない閉塞感に胸ふさがれることとなった。失われし2020年に惑うすべての人にぜひとも聴いてほしい1曲、それがSexy Zoneの「RUN」である。
そもそもこの曲は、このような事態を想定してのことではなく、中島健人主演のドラマ主題歌、及びSexy Zoneの新レーベル移籍後第1段シングルとして発売されたものであり、その歌詞の内容はドラマ及び今現在のSexy Zoneの所信表明というか、彼らのリアルになぞらえたエモーショナルでキャッチーな、まあいわば一見ファン向けといっても良いようなものではあった。
しかし、わたしは何気なくテレビ番組で見て「いい曲じゃん」と思っていたこの曲に、完全にやられてしまった。それはなぜか。
2020年、エンタメは突如として時を止めてしまったのだ。
わたしは演劇が好きで、ミュージカルが好きで、音楽を愛してる。それらを愛し、それらを浴びるように摂取することはわたしにとって生き甲斐であり、生きる糧だった。
しかし、それらは突然やってきた嵐のようなものに、すべてが奪われてしまった。
エンタメがなければ生きてゆけないわけではないけれど、わたしの生命を輝かせるのはエンタメなのだ。そのために働いてる。息をしている。
しかし、このような事態になると誰が予想できた?
誰も予想などできなかった。誰も悪くない……でも……
もやもやした気持ちのまま、中止と知らせのあったチケットをじっと見つめる。
わくわくした気持ちで、友達と協力しあってとったチケット。「仕方ないよね……」「また、落ち着いたら……」何度このやり取りをしただろう。
そんな中、事態はゆるやかに改善し出し、エンタメは少しずつ息を吹き返しはじめた。
わたしの待ち望んだ舞台やコンサートのいくつかも、再開されるという。わたしはこのニュースを心臓が凍りそうな想いで聞いた。
それというのも、ライブハウス、そして舞台においてのクラスターが連日ニュースで報道され、様々なワイドショーの様々な人々が異口同音にその対応、対策のマズさを批判する。「まあたしかにね」と思う部分もある。しかし折しもわたしの生命といってもよい大好きな舞台そしてコンサートが再開されるという。心穏やかでいられるはずもない。
正直複雑すぎた。もし、大好きな舞台やコンサートでそんな事態になり、かれらが批判の矛先に立たされることになったら………それこそ心臓が止まりそうな想いだった。
そんな中聴いた、Sexy Zoneの歌う「RUN」は、わたしの胸にぶっ刺さってきたのだ。
「確かなものなんてないけど」かれらはファンを信じ、必死になり、ありとあらゆる対策を講じてエンタメを「come back」しようとしてくれていたのだ。
「止まらないで」「途切れないで」と、せつないメロディにのせて胸に響いてくる若く透明感のあるユニゾン。以前からユニゾンの美しさには注目していたが、こんなにきれいだとは思わなかった。
オケとロックの絶妙な調和に警鐘を鳴らすかのような印象的なシンセサイザーのフレーズが何度も何度も差し込まれる。4人の個性的なボーカルはメロディと歌詞を考えるとベストな歌割りとしか言いようがなく、特に2番のアレンジのきいたAメロにのっかる菊池風磨のパンチの効いた甘い歌声は顎がはずれそうになるくらいの衝撃であった。これ考えたやつは天才か変態のどちらかだと心底思う。
なにより、まるで自分たち自身を鼓舞するように「止まらないで」「途切れないで」「終わらないだろう?」と繰り返し繰り返し訴えかけてくるせつなく哀愁あふれるメロディ。
そう、Sexy Zone。
ジャニーズの若手グループであるかれら自身も、折しも延期となったコンサートの振替講演を、事務所の先陣をきって発表したのである。
中島健人が言う。「止まらないで、という気持ち。エンタメを止めてはならないという気持ちで……」と。
ひょんなことから演劇畑からSexy Zoneというアイドル畑に片脚を踏み入れていたわたしは、泣きながらその言葉を聞いた。そして「止まらないで」「途切れないで」と歌うかれらのパフォーマンスを泣きながら見た。
エンタメを止めてはいけない。絶対に。
芸術は、音楽は、人が人たる証明なのだから。
でも、頑張るのは、かれらじゃないんだよ。
エンタメを愛するわたしたちが、頑張らないといけないんだ。
もちろん事務所や制作サイドのしっかりとした対策も必要だけれど。
かれらの「止まらないで」「途切れないで」という想いを支えて守ってあげないといけないのは、エンタメを愛するわたしたちなんだ。
ひとりひとりがその想いをしっかり持って、芸術を、音楽を、エンタメを終わらせないよう、途切れさせないよう、愛さなくてはいけない。努力しなくてはいけない。でないとこのままではエンタメは静かに心臓を止めてしまう。失われてしまう。
演者を批判しないで。罵倒しないで。そうじゃない。そうじゃないじゃない………
未曾有のこの事態。これから先、舞台やコンサートがどうなってゆくのか、正直わからない。
でも、芝居を、ミュージカルを、音楽をもし愛する気持ちがあるなら、Sexy Zoneが祈るような気持ちを込めて「止まらないで」「途切れないで」と歌っている「RUN」を聴いてほしい。
エンタメを愛する気持ちがあるなら、エンタメを止めないよう頑張らなくてはいけないのはかれらではなく、わたしたちだ。だから考える。
愛をもって知を。知をもって愛を。
愛と知で、エンターテイメントを守りたい。
あのわくわくした気持ち。幕が開く瞬間。会場が興奮と熱気に支配され、身体じゅうの血が沸騰するような、あの生命のかけらが一気にはじけてきらきらとちりばめられるような瞬間が戻ってくるその日まで。
わたしは「RUN」を聴き続ける。泣きながら。愛しながら。考えながら………ずっと。